「塩味」を犬はあまり感じ取れないといわれます。
犬には敏感に感じることができる「甘味」のような味覚もあれば、ほとんど味を感じ取れない「塩味」のような味覚もあります。味覚によって味わいが違うのでしょうか。
この不思議について本記事では探っていきます。「犬に必要な塩分の量」や「森での野生生活」を調べていくと、犬が塩味に鈍感になった理由として考えられる「3つの仮説」が見えてきました。
犬が塩味に鈍感な理由【仮説1】:体に必要な塩分の量が少ない
1つ目の仮説は「犬の体に必要な塩分の量が少ないから」です。下の表では、犬の体重ごとに1日に必要な塩分の量をまとめています。
愛犬の体重(kg) | 食塩相当量(g/日) |
---|---|
1 | 0.1 |
2 | 0.3 |
4 | 0.5 |
6 | 0.8 |
8 | 1.0 |
10 | 1.3 |
12 | 1.5 |
14 | 1.8 |
16 | 2.0 |
18 | 2.3 |
20 | 2.5 |
以下省略 |
食材に含まれている塩味の正体は、食塩(塩化ナトリウム)です。1日に必要な食塩の量は「食塩相当量」をみるとわかります。
たとえば体重4kgのトイプードルなら1日に0.5gの食塩を摂取する必要があります。体重6kgのペキニーズなら0.8g、体重12kgの柴犬なら1.5gの食塩がそれぞれ必要です。
ちなみに食塩0.5gは、塩を3本指(親指、人差し指、中指)でつまんだ「塩ひとつまみ」の量と同じです。
人間の基準から考えるととても少量に思えるかもしれませんが、体重5kg以下の小型犬に必要な塩分はそのくらいなのです。これ以上の量は愛犬の体に危険を及ぼしかねません。
「必要な塩分の量がもともと少ない」ので、味を敏感に感じとる必要が無かったのかもしれません。
人間の食塩必要量はトイプードルの14倍以上
人間の場合、1日に摂取したい食塩の量は以下になります。
人間の1日あたり塩分摂取目標量
- 18歳以上の男性・・・8.0g/日まで
- 18歳以上の女性・・・7.0g/日まで
出典:日経トレンディ「1日5グラムが世界基準、日本人まだ塩分取り過ぎ」
トイプードルの0.5gと比べると、人間の男性は単純計算でトイプードルの「16倍」、女性は「14倍」の塩分量が必要ということになります。
人間基準の味付けが、愛犬にとってはいかに「濃すぎ」であるかがわかりやすいと思います。
犬が塩味に鈍感な理由【仮説2】:生活環境に塩味が少なかった
犬はもともと森で生活をしていました。
「森には塩辛い食料がなかったのではないか」というのが2つ目の説です。
森林や山奥で取れる食材は「山菜」や「木の実」「果物」などが主で、素材の味がしょっぱい食べ物はなかなか思いつきません。山の幸を使った料理を味わえるお店でも、ほとんどが味付けをしてから提供しているのではないでしょうか。
3万年以上前、犬が森に暮らしていた頃に調味料はもちろんないので、犬は味が薄い食事にDNAレベルで慣れているのかもしれません。
そもそも犬の舌にある味覚を感じる細胞「味蕾(みらい)」の数は人間の5分の1程度しかありません。犬の舌は人間よりも味を感じ取りにくいのです。
犬が塩味に鈍感な理由【仮説3】:動物肉から十分な塩分を摂取できていた
森林や山奥で手に入る塩味は、ずばり「動物肉の血」です。
人間も犬も、犬が獲物としていた動物も、体内の約7割は「水」です。塩分はこの水1gあたりに9mg(0.9%)含まれているので、動物の生肉を食べると体内の塩分を同時に摂取することができるのです。
甘味についての記事でも触れましたが、犬の主食はもともと動物肉でした。そのためわざわざ「塩分を探して食べる」必要がなく、塩味を必要も無かったのかもしれません。
「ごく少量の塩」が犬にとって最適
塩味の主成分は「塩化ナトリウム」。
塩味という味覚は「塩化ナトリウムを感じ取るための味覚」ともいえるほど、犬にとっては生きるために欠かせない成分です。
ただしあげすぎは禁物です。
人間が思う「普通の量」でもあげすぎに該当してしまいますよ。犬は塩がないと生きていけないですが、その塩の量は「ごく少量」でよい動物なのです。
手作りごはんを作ってあげるときには、味付けをしすぎないようご注意くださいね。