ニホンイシガメの生態や大きさは?寿命、餌、繁殖、飼育の方法、注意点を紹介!

関東から九州にかけて広く生息しているニホンイシガメは、日本固有のカメとして古くからペットとしても飼育されてきました。

近年では外来種との交雑、外敵からの捕食によって単独種としての生息数が減ってきており、環境省版のレッドリスト2018では準絶滅危惧種にランクインする事態となっています。

この記事では、ニホンイシガメの生態や寿命、繁殖、飼育方法に加え、危惧されている問題についてまとめました。

 

 

ニホンイシガメとは

ニホンイシガメ01

ニホンイシガメは学名を「Mauremys japonica」といい、爬虫綱カメ目イシガメ科イシガメ属に分類される日本固有のカメです。

ニホンイシガメの幼体はゼニガメと呼ばれ、古くからペットとして売買されてきました。

ただ、生息している地域によって色や性格にばらつきがあること、外来種であるクサガメなどとの交雑が増えたことで雑種と勘違いされることもあります。

 

ニホンイシガメの分類

ニホンイシガメ03

イシガメ属に分類される種

  • ニホンイシガメ
  • ハナガメ
  • ミナミイシガメ(亜種ヤエヤマイシガメ)
  • アンナンガメ
  • カスピイシガメ
  • ギリヤイシガメ
  • チチュウカイイシガメ
  • カントンクサガメ
  • クサガメ

本来、ニホンイシガメは単に「イシガメ」と分類されていました。

しかし、同じイシガメ属で中国を中心に生息するミナミイシガメやその亜種であるヤエヤマイシガメがペット用として流通し始めたことで、「ニホンイシガメ」という和名がつけられ区別sれるようになりました。

 

ニホンイシガメの特徴

ニホンイシガメ12

特徴

  • 分布(生息地)
  • 形態
  • 生態
  • 性格
  • 食性
  • 病気
  • 寿命
  • 昼行性
  • 繁殖

 

分布(生息地)

具体的な分布地
本州、四国、九州、隠岐諸島、五島列島、対馬
淡路島、壱岐島、佐渡島、種子島

本州から九州にかけて広く分布しているニホンイシガメですが、一部はペットとして人為的に持ち込まれたものが野生化したと考えられています。1980年代の調査では確認されなかった馬毛島、屋久島、東北地方でも近年で分布が確認されています。

 

形態

最大甲長 22cm

身体のサイズはメスのほうがオスよりも大きく、オスは最大で14.5cmの記録があります。

 

椎甲板

断続的にコブ状の盛り上がり(キール)があり、後部の外縁にはノコギリ状に尖っています。老齢期ではノコギリ状の尖りが鈍くなってきます。

 

背甲の色彩

個体ごとに違う背甲色
橙褐色、黄褐色、褐色、灰褐色、暗褐色など

上記以外でも黄色や橙色の斑紋や暗色班が入るなど、ニホンイシガメの背甲は生息地域や個体によってさまざまな色彩があります。

背甲と腹甲のつなぎ目は黒や暗褐色の1色で構成されます。

 

喉甲板

腹側で頭部方向にある喉甲板はわずかに突出して反り上がった形状を持ち、左右の間には浅い切れ込みがあります。尻尾方向にある肛甲板にも同様の切れ込みが確認できます。

腹甲の色は黒や暗褐色1色となっていることがほとんどですが、外縁に黄や橙の斑紋が入っている個体もいます。

 

頭部

頭部は同種のカメに比べるとやや小型で、口先は突出しています。上顎の先端も鉤状に尖ったりしておらず、後頭部の側面にも細かな鱗がない点が特徴的です。

色は黄褐色、暗黄色、褐色をベースに側頭部分に黒い斑紋が入ります。

 

四肢や尾

四肢ともに細く、前肢の前面には丸みのある大きな鱗が並びます。水かきが指の先端まで発達し、四肢全体の色は黒や暗褐色、一部に黄色や橙色が混じっていて尾も同様の色彩となります。

 

生態

ニホンイシガメは穏やかな流れのある水域、湖沼、池、湿原、水田などに生息しています。水田など季節によって水が少なくなる場所では、一定地域のほかの水場を探して陸を移動することもあります。

冬場は水中にある穴や石の下、堆積した落ち葉の下などで冬眠をしますが、耐寒性は強く水温3.5℃の環境下でも活動できます。

 

性格

性格はペットとして馴染みの深いミドリガメ(ミシシッピアカガメ)、クサガメと比較すると神経質、臆病な面がありますが、長期で飼いならすと飼い主とほかの人とを区別できるくらいになります。

 

食性

ニホンイシガメは雑食です。魚、カエルやその卵、昆虫、甲殻類、貝、ミミズ、水生および陸生の植物、花、果実、藻などあらゆる種類のものを食べます。

同種他種を問わず、ほかのカメの卵を食べてしまうこともあります。

 

病気

ニホンイシガメは甲羅や皮膚が白く変色する水カビ病を発生しやすい傾向にあります。飼育をする際は陸のスペースを多めに作るよう心がけてください。

 

寿命

甲羅干しができない環境下で起こりやすい水カビ病、飼い主さんの不注意で起こりやすい日射病など、命に関わる病気にさえかからなければ30年以上生きることもあります。飼育の際は長く付き合う覚悟が必要です。

 

昼行性

ニホンイシガメは昼間に活動する昼行性です。紫外線を吸収するため日光浴が必要となるため、屋内での飼育を考えている人はどう対応するかを検討してくださいね。

 

繁殖

繁殖期 9〜翌年4月(冬季を除く)
産卵期 5〜8月
産卵数 1回につき1〜12個
孵化 約70日

繁殖期に入るとオスはメスの前で前肢を交互に振って求愛するようになり、メスが受け入れてくれればオスが上に乗って交尾を開始します。

年に1〜3度、産卵期になると8〜10cmの深さの穴を掘り、そこに1〜12個の産卵をします。産卵の感覚は10〜15日程度、約70日程度で孵化します。

 

卵や幼体

卵の大きさ 短径2.2cm×長径3.6cm程度
幼体の大きさ 甲長2.5〜3.5cm程度

ニホンイシガメの卵は楕円形をしています。孵化直後の幼体は椎甲板と肋甲板に3本ずつのキールがありますが、このキールは成長していくにつれて消滅します。

このころの甲羅は背甲が扁平で円形のため「銭」に似ていることから、江戸時代より「銭亀(ゼニガメ)」と呼んでペットとして親しまれてきました。もともとゼニガメはニホンイシガメの幼体に付けられたニックネームでしたが、近年では同じような形態をしたクサガメの幼体にもゼニガメと名付けて販売しています。

 

ニホンイシガメと人間の関係

ニホンイシガメ05

ニホンイシガメの生息数は年々減少しています。原因は森林伐採や護岸整備による生息地の破壊、水質汚染、ペット用としての乱獲とともに、産卵場所の温度環境変化による性差の偏りが考えられます。

そのほかクサガメやハナガメとの交雑による遺伝子汚染、アライグマによる捕食など外来生物が原因となる単独種の減少も危惧されています。

 

ニホンイシガメの深刻な問題

ニホンイシガメ300

問題点

  • アライグマによる捕食
  • 準絶滅危惧種に指定
  • 交雑による遺伝子消滅

 

アライグマによる捕食

ニホンイシガメにとってアライグマは最大の敵です。アライグマは水辺の小さな魚や甲殻類を好んで捕食するため、湖や川の浅瀬に生息するニホンイシガメと遭遇しやすい状況にあるからです。

ニホンイシガメは春から秋の間は広い範囲に分布して生活していますが、晩秋の田んぼの水が抜かれる時期になると越冬場所を求めて安定した水がある池や湖などに集まってきます。獲物を探して水場にやってくるアライグマの生活域と狭い範囲で重なるのです。

アライグマは2005年10月に特定外来生物に指定されたため新たな輸入や飼育、譲渡、保管、運搬、遺棄が禁止されました。しかしそれまでに家庭で飼育しきれず遺棄されたアライグマが野生化して繁殖し、全国の農林水産業者への被害を広げています。

 

準絶滅危惧種に指定

環境省が指定するレッドリストの2018年版では、ついにニホンイシガメが準絶滅危惧種(※)にランクインしました。

ニホンスッポンと琉球列島に分布するリュウキュウヤマガメ、リュウキュウマルハコガメ、ヤエヤマイシガメを除けば、本州から九州の広い地域の淡水域に生息する固有種はニホンイシガメのみ。世界的に見ても希少な生物であるニホンイシガメは、近年その数を大幅に減少させています。

都道府県レベルで調査するとさらに深刻で、東京、神奈川、千葉、群馬、徳島、長崎の6つの都道府県ではもっとも絶滅の危惧される生物の最高ランク「絶滅危惧1類」に指定されました。

※ 現時点での絶滅の危険度は少ないが、今後の環境変化によっては「絶滅危惧」に移行する可能性のある生物

 

クサガメとの交雑による遺伝子の消失

ニホンイシガメが抱えるもうひとつの問題は、クサガメとの交雑による独自の遺伝子の消失危機です。ニホンイシガメとクサガメとの交配によってできた雑種は繁殖力が強く、交雑を繰り返すごとにクサガメの遺伝子が深く浸透してしまいます。

クサガメは以前まで日本の在来種と考えられていましたが、遺伝子研究が進められた結果、中国大陸、または朝鮮半島からの外来種であると結論付けられています。

 

ニホンイシガメをペットとして飼う場合

ニホンイシガメ200

ポイント

  • 屋外での飼育
  • 屋内での飼育

ニホンイシガメのペットとしての歴史は古く、江戸時代以前から野生を採取した個体・飼育下で繁殖させた個体ともに流通してきました。

飼育下で繁殖された幼体はゼニガメという商品名で販売され水槽で飼育されることがほとんどですが、成体になれば屋外での飼育も可能でスペースや日光浴も十分に確保できるという利点があります。

ここでは屋外、屋内それぞれの場所で飼育する際の注意点を説明します。

 

屋外での飼育

外で飼育する際にもっとも気をつけたいのは脱走の恐れです。スペースを決めて柵を作るなど工夫を心がけてください。

またニホンイシガメは水質の悪化に弱い生物なので頻繁な水替えが必要になります。水の量は多めで濾過機能を設け、植物プランクトンが繁殖しやすい環境作りも大切です。カルキ抜きしていない水道水を使うと皮膚病を患いやすくなるため、あらかじめ植物プランクトンが混入している「グリーンウォーター」の使用が理想です。

飼育スペース内には必ず日光浴をするための陸場を作ってあげてくださいね。

 

屋内での飼育

屋内での飼育には暖房器具と紫外線の出る照明器具が必須となります。暖房器具は変温動物であるニホンイシガメの体温を安定させることと皮膚や甲羅を完全に乾燥させるため、照明器具は紫外線の吸収によるカルシウム生成を活性化させるために重要な役割を果たします。

大型の野生個体のなかには餌付きにくいものもいますが、ペットショップで販売されている配合飼料でも大丈夫なくらい餌付きのいい個体が多いのが一般的です。

 

ニホンイシガメを飼う上で準備するもの

ニホンイシガメ09

準備するもの

  • 飼育上の注意点
  • 水槽
  • 濾過
  • 照明
  • 低床
  • 保温器具
  • 節約して飼育したい場合

ニホンイシガメは単独でも多頭でも飼うことができます。ただ室内で飼育する場合は幼体から成体に至るまで身体のサイズが大きく変化するので注意してください。

古来から日本固有種として生息していたニホンイシガメは、1年を通して屋外で飼育させても問題なく、野生本来の姿を楽しむにはおすすめです。

ただ、脱走の心配や敷地スペースの問題で屋外では飼育できないという人のために、屋内で飼育する際の注意点と準備すべきものを紹介します。

 

飼育上の注意点

ペットショップにて 水カビ病に感染していない個体を選ぶ
水槽のレイアウト 水場と陸場を5:5以上で陸場を十分に確保

ニホンイシガメは、同じようにペットとして飼育されるミドリガメやクサガメに比べて皮膚病の1種である水カビ病にかかりやすい種類です。水カビ病を発症すると四肢や甲羅がカビで白っぽくなり、悪化すると皮膚がただれて呼吸困難に陥ってしまいます。

まずはペットショップで購入する前に個体をよく観察し、水カビ病にかかっていないものを選ぶこと。クサガメやミドリガメと同じような環境下で展示販売されている場合、水カビ病に感染しているケースが珍しくありません。とくに幼体は水カビが生えやすいので注意してください。

飼育する水槽のレイアウトは水場に対して陸場を半分以上確保すること。身体を完全に乾かせるだけのスペースが十分にないと、つねに甲羅や皮膚が湿った状態になり水カビ病が発症しやすくなります。水場の水深は浅く、水を飲める程度のスペースがあれば大丈夫です。

飼育に慣れるうちは水槽内にタッパを置いて水場にし、それ以外のスペースにはペットシーツなどを敷いて陸場とするのが簡単でおすすめです。水替えはタッパを取り出して交換するだけなので掃除の負担も少なくて済み、病気にかかる心配も減りますよ。

 

水槽

1匹飼育の場合 最低でも60×30×36cm
多頭飼育の場合 60×45×45cm、または90×45×45cm

ニホンイシガメの幼体は約1年で甲長10cm程度に成長します。最終的にメスは20cm以上、オスは15cm程度まで大きくなるので、それを見据えた水槽サイズを調達しておきます。

ニホンイシガメは他の種に比べて温厚な性格ですが、まれに激しいケンカをすることもあるので相性を日々の観察で見極め、別々の水槽にするか同じ水槽内で飼育するかを検討します。

ひとつの水槽内で複数飼育する場合は、大きめの水槽を準備したうえで仕切りを作ることをおすすめします。相性のいい個体同士であってもお互いの顔が常に見える状態だとストレスがたまり、ケンカに発展するケースもあるからです。

 

濾過

濾過能力の高い順 底面式→外部式→外掛け式→投げ込み式
メンテナンス性がラクな順 外掛け式→投げ込み式→外部式→底面式

濾過システムにはさまざまな種類がありますが、ペットショップで販売されているシステムのうち、ニホンイシガメの飼育には底面式、外部式、外掛け式、投げ込み式が検討対象となります。

長期で良環境を維持するには外部式濾過の利用がおすすめですが、予算やスペース、飼育スタイルによってその他の方式を採用しても問題ありません。

 

底面式濾過

水場の底に砂利を敷き詰めて濾過材とする底面式濾過は、砂利の中に水の浄化を担うバクテリアが住み着くため、濾過能力がとても高い方法です。

一方でゴミや糞などの沈殿物が蓄積するため、定期的に砂利ごと掃除をする手間がかかります。カメ類は大量の糞をするのでとくに頻繁に掃除をしなければなりません。同時に水草や石などを配置した複雑なレイアウトの水槽には不向きとなります。

 

外掛け式濾過

水槽の横に濾過機を引っ掛けて利用する外掛け式は、安価でメンテナンス性にも優れています。ただしシステム自体のサイズが小さいため濾過材も少なく、外部式や底面式に比べて濾過機能が劣り頻繁に水を交換する必要があります。

 

投げ込み式濾過

水中にシステムを投入し、エアポンプを接続して濾過するタイプです。幼体期に小さなプラスチックケースなどで飼育する場合や広めの水場でエアレーションを兼ねた濾過を考えた場合におすすめします。

設置場所に困らない反面、濾過材が少なく、排泄物の量が多いカメ類の飼育では大きな活躍はできません。頻繁な水替えが必要になります。

 

外部式濾過

今回紹介する4つの濾過システムのなかではもっとも能力が高く長期飼育に適した方法です。水槽とは別の場所に濾過層を設置し、水槽〜濾過槽〜水槽と水を循環させて飼育水のゴミや不純物を取り除きます。

この方式は別スペースにシステムを設置するため水槽のサイズに左右されることなく濾過層を大きくできるほか、水槽内の水位も自由に設定できます。

ただ水槽の水面より下に濾過槽を設置しなければならず設置場所に制限がある、稼働のしかたが複雑、他の濾過システムに比べて高価などの点も挙げられます。

 

照明

バスキングランプ 体温を維持するための照明
紫外線灯 紫外線を発生させるための照明

飼育にあたって照明の果たす役割はふたつあります。

ひとつは低気温の際、変温動物であるニホンイシガメの体温を維持し消化器官の働きと代謝を高めること。もうひとつは紫外線(UVR)を九州してカルシウムの生成を促すことです。

市販されている照明器具のなかには両方の役割をもつ器具もありますが、一般的にはバスキングランプと紫外線灯の2種類を準備します。

 

バスキングランプ

野生下、または屋外飼育のニホンイシガメは太陽を直接浴びることで体温の調節を行っていますが、屋内飼育ではバスキングランプがその代わりを担います。

ニホンイシガメをはじめとする爬虫類は変温動物ですので周囲の気温などに体温が大きく影響され、周囲が寒ければ体温が下がり、暑ければ体温も上昇します。気温が低く体温も下がった状態のままでは消化機能が落ち、代謝も促進されません。ニホンイシガメが自ら暖かい場所へ移動できない水槽内では必須のアイテムとなります。

白熱灯のレフ球、爬虫類用のハロゲンランプなど広い範囲でなくスポット的に照らして熱を発するランプを選んでください。

 

紫外線灯

その名前のとおり紫外線を発生するランプです。ニホンイシガメは日光に含まれる紫外線を吸収することで体内にビタミンD3を作り、カルシウムの生成を促します。カルシウムは骨格や甲羅の形成に必要な栄養素で、必要十分な紫外線が得られないと骨の病であるクル病などの発症につながってしまいます。

また紫外線は殺菌の働きもあるため、皮膚病ケアにも役立ちます。

 

低床

目的別の低床の量
観賞用途 水槽の底が隠れるくらいうっすら敷く
濾過用途 2〜3cm程度の厚さに敷く

水場の底に敷く砂利や土のことを低床といい、観賞用と濾過機能のふたつの役割を持っています。用途に応じて底に敷く量は変わりますが、濾過目的で敷いた場合は低床がない場合と比べて水質の安定に大きな差が出ます。

濾過能力が高いということはそれだけゴミや糞が蓄積しやすいことになるため定期的な掃除が必要で手間はかかります。必ず低床を敷かなければいけないわけではないので、見た目の好みや掃除にかけられる時間などと合わせて検討してください。

低床の種類としては「大磯砂」が一般的です。

 

保温器具

役割と種類
室温を暖める バスキングランプ
水温を暖める プレートヒーター、水中ヒーター

野生のニホンイシガメは冬になると冬眠をしますが、室内で飼育する場合は冬眠しないため保温器具が必要になります。

室温は先に紹介したバスキングランプを活用しますが、ここでは水温を暖めるための器具を紹介します。水槽のサイズや水の量、地域ごとの冬季の外気温に応じて検討してください。

 

プレートヒーター

水槽の下に敷いて利用するヒーターです。水槽内でなく、ヒーターの上に水槽を置くイメージです。水場の水位やスペースに影響を受けないため、小型の水槽やプラケースに向いています。水槽の外部に設置するためニホンイシガメが火傷をする危険もありません。

ほとんどの市販品は設定温度が一定または段階的に小幅調整のみ可能なため設置が簡単である反面、出力が低く外気温や水量の多い水槽には不向きです。室温が5℃以下になるような場所での使用はできないと考えてください。

 

水中ヒーター

水中に設置するヒーターで中型〜大型の水槽、外気が低温になる場所・地域での利用に適しています。低出力タイプから高出力タイプまで幅広く市販されているため、水量や外気温に合わせて選ぶことができます。サーモスタットが外付けのタイプは水温を1℃単位で設定できるのでおすすめです。

弱点は水中に設置するタイプのため、ある程度の水量が必要だということ、そしてニホンイシガメが触れて火傷をする危険があるということです。火傷対策にはペットショップや通販サイトで販売されている専用のヒーターカバーを利用するといいですね。

 

節約して飼育したい場合

ニホンイシガメは固有種として長く日本の風土に適した生活をしてきました。そのため飼い主が手間さえ惜しまなければ、濾過や照明などの器具を使わない低コストでの飼育も可能です。

 

水槽

通常飼育 低コスト飼育
ガラス製などの大きめの水槽 衣装ケースなどのプラススチック製

大きな水槽やガラス製の重い水槽を使わず、子亀のうちはプラスチックケースを活用します。水は浅めに設定し、個体が大きくなってきたら衣装ケースなどに移して飼育を続けます。濾過材を節約して清潔な飼育環境を継続するためには頻繁な水替えが必要ですが、容器が軽ければ作業時の身体の負担を減らせます。

ただ日光浴をさせるときはプラスチックケースから個体を取り出し、逃げ出さないようほかの容器に移して行います。プラスチックケースごと日光浴を続けていると1年程度でプラスチックが硬化し、ケースが壊れてしまうからです。

どうしても一般的な水槽で飼育したい場合は、水を抜いてから水槽を移動させてください。水の重みで水槽がたわみ、ガラスが割れる危険を避けるためです。

 

濾過

通常飼育 低コスト飼育
濾過システムを採用 濾過せず頻繁な水替え

手間はかかりますが頻繁に水替えをして清潔な水質を保てれば、濾過システムを利用する必要はありません。

ただ比較的安価な投げ込み式濾過装置+ポンプ活用ならエアレーションで水流を作りつつ水質悪化を遅らせることができます。水替えの手間を少しでも省きたい人にはおすすめです。

 

照明

通常飼育 低コスト飼育
バスキングランプ バスキングランプ
紫外線灯 日光浴

紫外線灯は使わず、日光浴で本物の紫外線を吸収させます。夏はよしずなどで日陰を作り、直射日光を避けてあげてください。日光浴の時間は10分程度、日陰であっても地面や壁面の反射によって紫外線の働きはのぞめます。

ただバスキングは狭いケース(水槽)内の全域に直射日光を当てると逃げ場がなく、とくに夏の時期には熱射病で死んでしまうケースもあります。好きなタイミング、好きな場所、好きな温度域のバスキングをしてもらえるようバスキングランプはリストから外せません。

照射時はランプの熱でプラスチックケースが溶けないよう注意が必要です。

 

低床

通常飼育 低コスト飼育
砂利を2〜3cmの厚さで敷く 低床を敷かない

濾過システムを利用しないため頻繁に全換水を行うので、低床を敷いてもバクテリアは定着しません。飼育ケース全体の重量も抑えられるため、低床を敷かないという選択をおすすめします。

見た目を少しでもよくしたいということであれば薄く低床を敷いてください。メンテナンスの手間は少し増えますが、まったく敷かない状態に比べれば水質の安定も図れます。

 

保温器具

通常飼育 低コスト飼育
ヒーターで加温 加温せず冬眠させる

冬季は野生下に近い環境を飼育ケース内で作り、冬眠させて保温器具を使わずに越冬します。ただし幼体、体調不良の個体は冬眠させず、保温器具を使っての飼育が必要です。

 

ニホンイシガメの飼育方法

ニホンイシガメ07

飼育時のポイント

  • 給餌
  • 換水
  • 日光浴

給餌

1回分の量 カメの頭の2倍程度
頻度 生後1年未満/1日に1〜2回、成体/2〜3日に1回
時間帯 日昇後の午前中

給餌は個体の状況を見ながら細かな量や頻度を調整します。表に記した内容をそれぞれ詳しく説明します。

 

給餌量は幼体、成体ともに頭の大きさを基準にしますが、年齢、気温、体調などによっても食べる量は左右されるため、その日のカメのようすを観察しながら加減します。

食べ残した餌は水や水槽内を汚しますので早めに取り除いてあげてください。

 

頻度

生後1年未満の子亀は栄養をたくさん必要としますので、1日に1〜2回を目安に食べるだけ与えます。成体は頻度を減らしますが、体調管理の意味でも定期的に体重測定を行い、体重が減っているようなら頻度を増やすよう心がけます。

 

時間帯

給餌は気温が上がり始める午前中に与えるのが理想です。

夕方近くなるにつれて気温は下がり、変温動物であるカメの体温も下がっていきます。気温・体温の低い状態での食事は消化不良になり、体内で腐敗してしまいます。食後にゆっくり日光浴をして体温を上げられるような時間帯を選んでください。

遅くとも消灯3時間前までには給餌し、日光浴できない時間帯ならバスキングランプで身体を温めさせるようにします。

 

換水

濾過器を使用する場合の目安 1〜2週間に1回程度
濾過器を使用しない場合の目安 頻繁に(夏場は毎日)

定期的な水の入れ替えはニホンイシガメを飼育する上で重要なことです。頻度は濾過器を使っている場合、使わない場合、また水量や個体数によって変わりますが、普段の観察による水の汚れ具合で判断するのが基本です。

怠ると糞やゴミが沈殿して水が濁り、いやな匂いを発するようになります。飼い始めで換水時期の判断ができないという場合は、目安よりも多めの回数で行いながら水の状態、個体の様子を観察して頻度を決めるといいですよ。

換水については濾過を行う場合と行わない場合とで手順などが変わりますので順に説明します。

 

濾過を使用する場合

濾過作用が十分に行われている状態なら、換水頻度は1〜2週間に1回程度の目安で大丈夫です。

換水の基本は「水量は少なく、回数は多く」です。換水といってもすべての水を一度に入れ替えるのではなく、全体のおよそ3分の1程度を1回の換水量と考えてください。大量の水を一度に入れ替えてしまうと濾過機能を果たすバクテリアまでいなくなり、水質も不安定になってしまうからです。

換水は先に必要量の水道水を水槽とは別の容器に入れ、市販のカルキ抜き剤を入れて塩素を抜いておきます。水槽から1回分の水を除去したのち、用意した水を注入という手順で行います。

 

濾過を使用しない場合

濾過をしないと水質汚染が速まるため、換水頻度も多くなります。水量が少ない、水温が高い、個体サイズが大きい、複数飼っている場合はとくに頻繁な換水が必要です。気温の高い夏場は毎日行うつもりでいてください。

換水方法は濾過をしている場合とは異なり、すべての水を一度に新しい水に入れ替えます。また水も水道水をそのまま利用します。あらかじめ汲み置きした水や塩素の入っていない井戸水、カルキ剤を入れた水などは雑菌が繁殖しやすくなるので使いません。

飼育水と新しく入れる水道水に温度差がある場合は、お湯をたすなどして水温を調整してから換水するといいですよ。

 

日光浴

紫外線灯を使わない 最低でも週に1度は日光浴をさせる
紫外線灯を使用している 負担にならない程度に日光浴をさせる

日光浴によって紫外線(UVR)を吸収させることは、ニホンイシガメを健康に飼育していくために必要不可欠です。とくに室内の水槽で飼育する場合は機会を意識的に作らなければなりません。

ただ日光浴といっても逃げ場のない狭い水槽内で直射日光に当てるのはNGです。カメの体温が急激に上昇し、命の危険に晒される可能性もあるからです。

直接太陽が当たらなくても、水槽の蓋や窓を開けてテラスや縁側の日陰に移動してあげるだけで十分。日陰でもガラスがなければ紫外線を取り入れることはできるので、あえて太陽が出ていない曇りの日を選ぶのもいいですね。

 

ニホンイシガメの冬眠の流れ

ニホンイシガメ10

野生のニホンイシガメは池や沼底、川の横穴などで冬眠して越冬します。ただ冬眠とはいえ、ニホンイシガメのオスは低温下でも活動できます。ときには同じ場所に集団で冬眠することもあり、そうした場合は冬の間に交尾をします。

ニホンイシガメのオスは自分より身体の大きいメスの活動が鈍っている時を狙って交尾をするという、一般の爬虫類としては考えられない少し変わった生態を持っています。

ペットとして飼育しているニホンイシガメを冬眠させることもできます。飼育下での冬眠には、野生の状態を再現して繁殖を促す、冬季の飼育コストを低く抑えるというふたつの意義があります。

飼育下で冬眠をさせる場合には晩夏から準備が必要となるので、季節ごとの流れを説明します。

 

晩夏

肥育期 食べるだけ餌を与える

成熟したメスは冬眠が開けると産卵期に入るため、体内で卵が発達して内臓が圧迫され絶食状態となります。この時期に栄養を十分に与えて太らせておくことが大切です。栄養を補ってよく太ったメスは、後肢の付け根部分の皮膚が甲羅からはみ出てきます。

未成熟のメスは成長期なのでしっかりした栄養補給が必要で、メスに比べて食が細いオスも食欲がいちばんある時期なので、同じように餌を欲しがるだけ与えます。

 

晩秋

食欲減退期 食欲に応じて給餌を抑える

メスもオスも食欲が落ちる時期ですが、食べるだけ与えるという意味では変わりません。季節のせいで気温が下がるので、食後はたっぷり日光浴をさせて体温維持と紫外線吸収をさせてください。日光浴の際は日陰など逃げ場を作っておくことも忘れずに。

体重はピーク時よりも10〜15%程度落ち、この頃に交尾を確認することもあります。

 

初冬〜初春

冬眠期 無給餌・日光浴もしない

水中で冬眠するので通常より多めの水量を準備しておき、なるべく水温の変化が激しくならないよう配慮します。代謝は下がりますがわずかに排泄物も出るため、冬眠を妨げない程度に換水を行います。

 

初春

活動期 少しずつ給餌を開始

地域によって変わりますが3月中旬から4月初旬ごろ、冬眠から覚めて動き始めます。最初の頃の食欲はないので少しずつ与え、4月中旬ごろから飼育内容と給餌量を通常に戻していきます。

日光浴は天候によって急激に温度が高くなることもあるため、個体が自ら落ち着き場所を選べるような場所で行ってください。

5月ごろ、妊娠したメスの食欲減退がみられるようになります。

 

ニホンイシガメの繁殖の流れ

ニホンイシガメ02

意図的に繁殖させる場合は準備が必要です。流れごとの注意点を説明します。

 

成熟した雌雄の調達

体重 繁殖可能な年齢
成熟したメス 550〜1500g 5〜7年
成熟したオス 150〜250g 2〜3年

ニホンイシガメの成熟したオスとメスとでは、身体の大きさにかなりの違いがあります。また一般的なカメの成熟(繁殖可能)は身体の大きさによって決まるとされていますが、ニホンイシガメは年齢も関係していて、身体が小さくても一定の年齢に達していれば繁殖できることがわかっています。

成熟したかどうかは春から夏にかけて卵をもっているか、または追尾行動や求愛行動をとるかによって判断できます。

性別を見極められるようになるのは甲長が3.5cmくらいになってからです。尻尾部分にある総排泄孔(肛門)の位置が甲羅よりも外へ出ているならオス、内側にあるならメスと判断します。

性別はほかの亀と同じく産卵から孵化までの期間に決まります。卵のあった場所が低温ならオス、高温ならメスになることは研究で明らかになっていますが、境界線となる詳しい温度やほかの条件については解明されていません。

 

環境の制御

繁殖のための適切な環境
・安心して産卵できる産卵床の設置
・広いスペースと産卵のための穴を掘れる深い土

ニホンイシガメは古くから日本の固有種だったこともあり気候など日本の風土に順応して生活できますが、繁殖に関しては条件がそろっていないと実現しません。

産卵場所はメスの意思によってのみ決定します。メス自身の好みで産卵場所を選べるような広さのある平面と、卵を産み落とすための穴が掘れる環境が必要です。

ペットとして飼っていたニホンイシガメが繁殖を成功させた例はありますが、いずれも屋外の広い場所での飼育環境ばかりで、水槽内での成功例はごくわずかしかありません。

 

雌の肥育・栄養管理

冬眠明けから産卵までの流れ
冬眠明け→摂餌開始→拒食→産卵→摂餌開始→繰り返し

健全な繁殖をさせるには、冬眠前のメスにたくさん栄養を蓄えてもらうことが何より大切です。

前年に交尾したメスは冬眠が明けてから産卵します。冬眠が明けて数週間は餌を食べますが、すぐに抱卵すると絶食期間に突入します。産卵後はまた餌を食べるようになりますが、年に1〜3回産卵をするニホンイシガメは10〜15日くらいすると2サイクル目の抱卵による絶食が始まります。

冬眠期間4〜5ヶ月、抱卵期間のべ1〜3ヶ月、この間のメスは餌を食べません。前年秋までの摂餌がどれだけ重要かが理解できますよね。成熟したメスは毎年産卵をするので、翌年もまたこのサイクルを繰り返します。

雑食のニホンイシガメは野生下では捕食の機会があればなんでも食べて栄養補給につとめているので、飼育下となっても多くの種類の餌をまんべんなく与え豊富な栄養素が得られるようにしてあげてください。ペットショップで販売されるカメ専用の餌で足りない栄養素を補給する考え方もありですね。

 

産卵床の確保

産卵床に適した材質
砂、土、園芸用土を湿らせて混ぜたもの

産卵床は砂や土を敷くだけでなく、穴を掘っても崩れない程度の粘り気、卵を孵化させられる温度の確保が必要です。床の深さは15cm程度を意識して作ります。

野生下のメスは匂いを嗅ぐようにして産卵場所を探しますので、なるべく広い範囲に産卵床を作り、メスが場所を選べるようにしてあげるといいですよ。

 

抱卵の確認

抱卵の確認方法
・X線によるレントゲン検査
・指で直接触れて確認

抱卵しているかどうか確認するタイミングは、メスが拒食しはじめた、または摂餌量が減り始めたころから可能になります。

動物病院でのレントゲン検査のほか、直接指で触っての確認方法もあります。飼い主さん自身が確認する場合は後肢の間、股間にあたる部分に指を入れてやさしく触るようにしてください。しっかり卵殻が形成されていれば、指の感覚で卵を持っていることがわかります。

 

産卵

産卵期 5〜8月
産卵時間帯 日没〜夜明け
産卵巣の大きさ 深さ15cm×直径10cm程度

冬眠明け後、およそ3〜4週間の食欲減退または拒食期間を経て産卵を開始しますが、産卵直前のメスは産卵するための場所選びをし、気に入った場所が見つかったら後肢で穴を掘って準備を整えます。

一度の産卵では1〜12個の卵をおよそ1分ごとに産み落とします。産卵が終わると産卵巣を埋め戻し摂餌を始めますので、2サイクル目の産卵に備えて十分な給餌をしてあげてください。産卵巣を決定してから産卵が終わるまでの時間はおよそ1時間です。

産卵床がない、または気に入った産卵場所が探せなかった場合は産卵をせず、約1〜2ヶ月程度は体内に卵を持ち続けます。その間に飼い主さんが別の産卵床を準備できればいいのですが、産卵場所が確保できないままだと水中や陸上に産み捨てられてしまうので注意してくださいね。

 

孵卵

人工孵化で必要なもの 恒温槽、温度計、湿度を保てる基質
恒温槽作りに必要なもの 水槽、循環ポンプ、温調設備、発泡スチロール板、水苔など、蓋付きタッパー

恒温槽には湿式と乾式の2種類があり、槽内の温度を一定に保つシステムが備えられたもののことです。湿度を保てる基質には園芸用土を構成する素材として知られている水苔やバーミキュライト、パーライトなどがあります。

ここでは一般的な湿式恒温槽を使った人工孵化の方法を説明します。

まずは恒温槽作りから始めます。素材が準備できたら、水槽に温調設備と循環ポンプをセットして水槽全体を発泡スチロール板で囲います。水苔は水で濡らしてから固く絞り、蓋付きタッパーに入れて蓋をします。蓋には針や釘などで10個程度の穴を空けますが、直径が大きすぎる穴だと孵化後の子亀が脱走してしまうので注意してください。恒温槽は25〜30℃を保てるよう設定しておきます。

恒温槽ができたら卵を産卵巣から取り出し、水苔の入ったタッパーに置いていきます。注意したいのは卵の天地を換えないこと。産卵巣から取り出す前に鉛筆などで天地がわかるよう印をつけることをおすすめします。すべての卵をタッパーに移したら恒温槽に戻して完了です。

卵が正常に発育していけば、およそ1〜2日程度で卵の表面に受精班と呼ばれる模様が浮かびます。受精班が表れなければ孵化する可能性は低いのですが、判断に自身がない人は念のため孵卵をそのまま続けても問題ありません。

 

検卵

検卵時期 産卵後4〜6週間後

順調に卵が成長していれば約4〜6週間後には検卵できるようになります。検卵の方法は、懐中電灯を卵に当てるだけで済みます。4週後くらいでは血管の発生が、6〜8週後になれば亀の形が影として確認できるはずです。

 

孵化

産卵から孵化までの期間 約2ヶ月

孵化直前の卵は水分を吸収しているため産卵時よりひとまわり大きく、感触は皮のようにソフトに変化しています。同じタイミングで産卵された卵たちは約36時間以内にすべて孵化します。

産卵初期で成長が止まってしまった卵は殻の変化がなく、孵卵後期に死籠りした卵は殻の変化はあっても孵化しません。ほかの卵が孵化してから48時間以上経過しても孵化しない卵は、残念ながら死籠りしていると判断してください。

子亀は「卵嘴(らんし)」と呼ばれる吻端の棘を使って卵膜を破り、その直後に肺呼吸へ移行します。一度卵膜を破ったとしても卵黄嚢の中に卵黄が残っている場合もあるため、すべての卵黄嚢を吸収して自力で卵から這い出てくるまで子亀を外へ出さないようにしてください。

 

孵化仔の管理

飼育槽へ移動のタイミング 孵化槽内を移動し始めてから
給餌のタイミング 飼育槽へ移動した翌日から
飼育水温 25〜33℃程度

卵黄嚢を吸収しきった子亀は孵化槽内を移動し始めますので、このタイミングで飼育槽へ移します。給餌は食べるだけ与えますが成体に比べると消化能力は劣るため、飼育水温を高めに設定しておきます。

健康な子亀なら25℃前後の飼育水温で問題ありませんが、同時に孵化した子亀のなかに成長不良の個体がいる場合は温度を高めに設定して代謝を促進させます。

 

ニホンイシガメと水草の相性

ニホンイシガメ11

水草との相性

  • 好んで食べる植物
  • たまに食べる植物
  • ほぼ食べない植物

ニホンイシガメを飼育する池や水槽内の見栄えをよくするために水草を植えたいと考える人のために、ニホンイシガメと各種の水草との相性を説明します。

まずニホンイシガメは水底に砂などがあると足で掘り返す習性があるため、十分な厚みのある底床にしておかないと水草を足で引っ張って抜いてしまうことがあります。

深さのある底床を準備する、または水草を鉢植えして水槽内に設置するなどで対応可能です。

ニホンイシガメは雑食性のため種類によっては水草も食べますので、数日から1週間程度の旅行に出かけるときなどは好みの水草を植えておくと餌にもなっていいですね。

またニホンイシガメに害を及ぼすわけではないけど好んで食べない水草は、水槽内で育成すれば観賞用にもなる上、水質維持にもつながります。

以下、ニホンイシガメの好みと水草の種類を紹介します。

 

好んで食べる植物

オランダガラシ(クレソン)

時期になればスーパーなどでも簡単に手に入るクレソンは、腐りにくいため細切れにして水槽内に入れておけばお腹が空いたときに食べて処理してくれます。

 

アヌピアス系

根付きがいいので水槽には向いています。水中に植えるとニホンイシガメが好んで食べるので餌代わりにもなりますが、根や茎にシュウ酸カルシウムが含まれるので注意が必要です。

同じアヌピアス系植物でも陸場に植えてあるものはなぜか食べないため、ニホンイシガメの健康を優先して水中には植えない選択もありますね。

 

たまに食べる植物

グリーンミリオフォラム

しっかり根付けば成長速度が速い水草なので、それまで別の水槽で育成させてから飼育水槽に入れることをおすすめします。十分な深さのある底床に根付けばいたずらによって引き抜かれたりもしませんが、ときどきかじることもあると覚えておいてください。

 

アマゾンフロッグビット

水質浄化能力の高い浮き草で、ときどきニホンイシガメが食べることもあります。繁殖力がとても強いため、別の水槽で育成しつつ少量を飼育水槽内に投入することをおすすめします。

 

ほぼ食べない植物

マツモ

根がないため輪ゴムなどで束ねて水中に投下する水草です。とても成長が速く、十分な照明と成長に適した水質があれば肥料は必要ありません。水槽をセットした直後の水質安定化にも使えます。

繁殖力が強い、ニホンイシガメは食べないということで放置したままだと水槽内がマツモで満たされ、カメの遊泳スペースがなくなってしまうため頻繁にカットするなどの手入れは必須です。

 

ミクロソリウム

根付きのいい水生のシダ植物なので、別の水槽内でしっかり育成してから飼育水槽に植え直します。繁殖はゆっくりで丈夫なため、観賞用としても長く楽しめて手間もかかりません。

 

ペットとしてのニホンイシガメ

ニホンイシガメ13

日本の風土に古くから生息してきたニホンイシガメは変化に富む日本の気候にも適応し、性格もおとなしいため飼いやすい爬虫類です。清潔な水を保つこと、日光浴をさせることなど飼育時の注意点さえ守れば、相棒として長く生活をともにすることができますよ。