「朱文金(しゅぶんきん)」は日本で作出された金魚で、日本人には馴染深い品種です。
丈夫で飼いやすいとされ、金魚初心者が入門編として飼い始めるケースも多いです。
この記事では、朱文金とはどんな金魚なのか、その歴史や性格、特徴、種類、飼いやすさ、値段、飼育方法などをまとめました。
朱文金とは?
朱文金とは金魚の原点である和金型で長い尾に、朱(赤)、浅葱(藍)、墨(黒)の入った和を感じさせる色合いが美しい金魚の一品種です。
英語名は「シングルテイルドファンシーゴールドフィッシュ(Single tailed fancy goldfish)」です。
名前の由来
朱文金は元々「朱文錦」と書き、浅葱色をベースに朱の色合いが鮮やかな体色が錦のように美しいことから命名されました。
朱文金の歴史
1892年(明治25年)に金魚養殖家の初代・秋山吉五郎(あきやまよしごろう)が、フナ尾(フナに似たシンプルな形の尾)の「和金」とコイ科フナ属の「ヒブナ」、「三色出目金」を混在し自由交配させた際に作出された品種とされていました。
しかし後にヒブナとされていた個体が和金であったことが判明してします。
そして1900年(明治33年)に水産・生物学者で農商務省水産講習所の初代所長・松原新之助(まつばらしんのすけ)により名付けられ、1992年(明治35年)に発表されました。
朱文金の性格
温和な性格のため、混泳に向いている金魚です。
しかし泳ぎが得意ゆえに、出目金やらんちゅうなど泳ぎを苦手としている個体と混泳をさせると、餌を横取りしたり追い回していじめたりする恐れがあるので、注意が必要です。
朱文金の特徴
朱文金はフナ尾和金と出目金がベースとなり作出された品種で、金魚の原型であるフナの形が色濃く現れている和金型の体型をしています。
体色の赤色、藍色、黒色の3色が入り混じったキャリコ模様や透明なウロコが特徴的で、個体により模様の出方が異なるため柄のバリエーションが豊富です。
「吹き流し尾」と呼ばれる長い尾びれが朱文金の優雅さを際立たせています。
水質や水温など生活環境への順応性が比較的高く、丈夫で飼育がしやすいので「金魚入門編」に適した品種です。
大きさ
朱文金は比較的大きく成長する品種です。
平均的な大きさは15cm前後ですが、育て方によっては20〜30cmもの大きさに成長させることも可能です。
大きく成長させるには
与える餌の量で成長の速度をコントロールすることができます。
大きく育てたい場合は、1回に与える餌の分量は変えずに餌を与える回数を増やします。しかし極端に増やし過ぎると消化不良を起こす原因となるため、3回を目安とします。
また人工飼料と併せて、より栄養価の高い冷凍アカマムシや冷凍イトミミズなどの生餌を与えることもおすすめです。
寿命
朱文金の平均寿命は5〜8年程度です。
水質や水温に気をつけて飼育をするとさらに長く生きることも可能です。実際に20年以上生きた個体も存在します。
体が丈夫なため、総じて長生きの傾向にある品種といえます。
長生きさせるポイント
長生きさせるポイント
- 大きな水槽での飼育
- 栄養価の高い餌
- 水質・水温の管理
長生きをさせるためには「ストレス」を与えないことが一番です。
運動を制限される小さな水槽や適正基準から外れた水質や水温は、ストレスを与える原因となります。
快適に過ごせる環境を整え、栄養価の高い餌をまめに与えることが長生きに繋がります。
色の変化
朱文金は成長の過程で頻繁に体色が変化します。
稚魚は銀に近い黒い体色をしていますが、徐々に赤、白、藍が顔を出してきます。2歳くらいまで変化を続けることが多いですが、中には5年経っても変化する個体も存在します。
一つとして同じ柄を持つ個体は存在しません。
コメットとの違い
朱文金と似ている品種として挙げられることが多いのが「コメット」です。
どちらとも和金をベースに作出されているため、体型がそっくりです。
コメットは赤と白の体色を持ち、尾びれが長く伸長します。尾びれの長さは朱文金より長い傾向にあります。
一方朱文金は、3色出目金を引き継いでいるため赤、藍、黒が混じった体色と透明な鱗を持っているので、模様の差はわかりやすいです。
極めて近い品種のため、交配させることが可能です。
朱文金の種類
朱文金からの派生品種
- ブリストル朱文金
- 藍朱文金 など
日本で作出された朱文金が品種改良されて誕生した新たな品種も存在します。
ブリストル朱文金
英国のブリストル地方で品種改良され、ハート型の尾びれが特徴的な品種です。体型は朱文金と同様に和金型をしており、泳ぎが得意な点も共通しています。
日本には2002年に初めて持ち込まれたとされます。当初は珍しく高値で売買をされていましたが、近年では1,000〜2,000円程度で販売をされています。
体色の改良も行われていて、鉄のような色合いの「アイアンブリストル」や薄いグリーンの「グリーンブリストル」なども誕生しています。
ブリストル朱文金からの派生
ブリストル朱文金からさらに派生した「寿恵廣錦(すえひろにしき)」「もみじブリストル」などの種類も存在します。
ブリストル朱文金がハート型の尾びれであるのに対し、派生種である寿恵廣錦は尾びれが扇型になっています。
またもみじブリストルは、鱗の一枚一枚がそれぞれにキラキラと光輝き網目状に見える特徴があります。
藍朱文金
体色から赤色が抜け、藍色が強く主張している朱文金です。
赤色が全く混じっていない個体は非常に珍しく、一万円以上の高値がつけられる傾向にあります。
朱文金の飼いやすさ
金魚の中でも一番といって良いくらい丈夫な体を持っています。
水温や水質への適応能力も高く、金魚を初めて飼育する初心者にも飼いやすい品種です。
朱文金の値段は?
朱文金は日本ではよく見かける品種で、一般の金魚屋やホームセンターなどで比較的簡単に入手することができます。
丈夫で飼育がしやすく繁殖も容易なため、価格はお手頃です。発色具合により値段の幅はありますが、だいたい300〜2,000円前後で購入することが可能です。
朱文金の飼育に必要なもの
朱文金の飼育に必要なもの
- 水槽
- フタ
- フィルター
- エアレーション
- 照明
- ヒーター、クーラー(冷却ファン)
- 水温計
- カルキ抜き剤
- 餌 など
朱文金を飼育する際には、基本上記に挙げたものが必要となります。特に気をつけたほうが良いポイントがある「水槽」「フィルター」「餌」の選び方を紹介します。
水槽
水槽の目安 | |
---|---|
サイズ | 適した飼育数 |
45cm | 3匹 |
60cm | 6匹 |
90cm | 8匹 |
見た目の美しい朱文金の鑑賞には、透明度の高いガラス水槽がおすすめです。
朱文金は大きく成長する可能性があり、遊泳性も高い品種のため、飼育スペースに余裕のある水槽を用意することが望ましいです。
また水槽からの飛び出し防止のためにフタをすることも忘れないようにしてくださいね。
フィルター
おすすめフィルターのメリット・デメリット | ||
---|---|---|
フィルターの種類 | メリット | デメリット |
上部式 | ・リーズナブル ・メンテナンスが楽 |
・水槽の上に設置するため見た目が良くない ・水の落ちる音がするので静音性が低い |
外部式 | ・見た目が良い ・静音性が高い |
・価格が高い ・上部式よりメンテナンスに手間がかかる ・設置の場所を取る |
朱文金は他の金魚に比べ餌を多く食べるため、餌の影響で水質が悪化するスピードが早いです。
そのため、ろ過能力に優れた上部式や外部式のフィルターの使用が適しています。
餌
餌は基本的に市販の金魚用の人工飼料で問題ありません。できるだけ脂肪分の少ないものを選ぶことをおすすめします。
だいたい5分で食べきれる分量を目安に、1日に1〜2回与えます。金魚は満腹中枢がないため、与えたら与えた分だけ食べ続けます。そのため消化不良を起こしたり、太りすぎたりして、健康に害を及ぼすことがあるため注意が必要です。
朱文金におすすめの餌を紹介します。
ジェックス 金魚元気 プロバイオフード色揚げ220g 善玉菌&天然色揚げ成分配合 浮上性顆粒タイプ
商品名 | ジェックス 金魚元気 プロバイオフード色揚げ220g 善玉菌&天然色揚げ成分配合 浮上性顆粒タイプ |
---|---|
使用原料 | フィッシュミール、小麦粉、大豆、シュリンプミール、胚芽、スピルリナ、生菌剤、ミネラル類(リン、カルシウム、カリウム、鉄)、ビタミン類(A、B、D3、E)、増粘安定剤(グルテン)、着色料 |
内容量 | 220g |
価格 | 392円(2019年3月6日現在) |
乳酸菌、酵母菌、納豆菌という3つの善玉菌が腸内環境に優しく、糞の汚れと水槽のニオイを分解してくれるフードです。スピルリナやアスタキサンチンが赤色を鮮やかに色揚げしてくれます。
またラボトリーのテストでは体重増加率や嗜好性テスト、水汚れ試験などのいずれのテストもクリアしています。
咲きひかり 金魚 艶姿 特級色揚 沈下 100g
商品名 | 咲ひかり 金魚 艶姿 特級色揚 沈下100g |
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使用原料 | フィッシュミール、スピルリナ、小麦粉、小麦胚芽、大豆ミール、ビール酵母、かしこ、グルテンミール、魚油、ファフィア酵母、マリーゴールド抽出物、植物油、カロチノイド、米ぬか、海藻粉末、アミノ酸(メチオニン)、ガーリック、生菌剤、ビタミン類(塩化コリン、E、C、イノシトール、B5、B2、A、B1、B6、B3、葉酸、D3、ビオチン)、ミネラル類(P、Fe、Mg、Zn、Mn、Cu、I) |
保証成分 | 蛋白質:46%以上 脂質:7.0%以上 粗繊維:2.0% 水分:10%以下 灰分19%以下 りん:1.5%以上 |
粒径 | 1.3〜1.5mm |
内容量 | 100g |
価格 | 688円(2019年3月6日現在) |
「咲きひかり」には生きた菌=ひかり菌(パチルス菌の一種)が豊富に含まれていて、腸内環境をいたわってくれる、バランスの良い総合栄養食です。
様々な色揚げ原料が配合され、強い色揚げ性能が追求されています。粒の大きさは1.3〜1.5mmのディスク型SSS粒で、幅広いサイズの金魚に対応しています。
朱文金の飼育方法は?
朱文金を飼育する際に気をつけるポイントや稚魚の育て方を紹介します。
水質・水温
朱文金の適切な飼育水温は10〜25度です。15度以下になると動きが鈍くなり、10度を下回ると「冬眠」の準備を始めます。
金魚が冬眠する際には「青水(グリーンウォーター)」が必要です。環境が整わない中で冬眠に入ると、冬眠に失敗して死ぬ恐れがあります。
屋内飼育では一年を通して水温を20度以上に保つことが適しています。しかし30度以上になると体調を崩す可能性があるため、気温が上がる夏場はクーラーや冷却ファンを使用して水温の管理をすることが望ましいです。
また水質は「中性」を保つようにしてください。日本でブリードされた個体は日本の水道水の水質に適応しているので、カルキを抜けば特に水質の調整は必要ありません。
水槽レイアウト
吹き流しの尾をなびかせて優雅に遊泳する姿が朱文金の魅力の一つでもあるので、水槽内のレイアウトは遊泳の邪魔にならないように、シンプルにすることをおすすめします。
朱文金のみを飼育する水槽には、砂や砂利などの底床材は必要ありません。口に入ったものを飲み込む習性のある朱文金は、小さい砂利を誤飲する可能性があるので、もし底床材を敷く際には注意が必要です。
水草との相性もあまり良くありません。柔らかい種類の水草は食べてしまい、硬い種類の水草は尾びれを傷つけて鑑賞性を低下させる他、傷口から感染症に感染することも考えられます。
水草を入れたい場合は、ホテイアオイのような浮き草やマツモが適しています。
また泳ぎが得意な品種ですが、休憩ができない程の強い水流は衰弱の原因となるため、エアレーションやフィルターの排水の配置には注意してくださいね。
メンテナンス
メンテナンスの基本は、水槽の水換えと水槽内や周辺機器の掃除です。
水換えは1週間に1回を目安に、飼育水の約1/3の量を交換します。全ての量を一気に交換すると水質が変わり、環境の急変に対応できず死ぬ恐れがあります。
底砂を敷いていないベアタンクの場合でも、クリーナーを使用すると底に蓄積した糞やゴミを簡単に除去できるので便利です。
また数ヶ月に1回はフィルター内の確認を行い、必要があればろ材の洗浄や交換をしてください。
水作 プロホース エクストラ L
ブランド | 水作 |
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商品名 | プロホース エクストラ L |
サイズ | 約440mm/27.5mm |
重量 | 約200g |
対応する水槽の高さ | 45cmまで |
価格 | 1,031円(2019年3月6日現在) |
数回スタートポンプを押すだけで排水が始まります。水槽の大きさや砂利の種類によって排水の速度調整が可能で、観賞魚や水草に優しい水換えができます。
砂底にパイプを差し込むと、砂利の中に蓄積した老廃物が古くなった飼育水とともに排水されます。
稚魚の育て方
栄養価が高く、カルシウムが豊富なブラインシュリンプを与えることが好ましいです。
稚魚は一度に多くの餌を食べることができないので、1日3回に分けて適正量を与えてください。
水温は28度程度を維持し、泳ぐ力がまだ弱いため水流は弱目の設定が適しています。
朱文金は混泳は可能なのか?
先にも紹介した通り、朱文金は基本的に温和なため混泳に向いている品種です。しかし泳ぎが苦手ならんちゅうやピンポンパールなどと混泳させると、餌を横取りしたり追いかけ回したりします。
それにより泳ぎが苦手な個体が衰弱する恐れがあるので、朱文金を混泳させる場合は、コメットや和金など泳ぎが得意な品種を選ぶことが好ましいです。
また朱文金は雑食性で、口に入る小魚や甲殻類を餌だと思い食べるため、混泳させる個体のサイズにも配慮が必要です。
朱文金がかかりやすい病気は?
朱文金がかかりやすい病気
- 白点病
- 尾くされ病
朱文金がかかりやすいとされる「白点病」「尾くされ病」を紹介します。
白点病
繊毛虫(せんもうちゅう)の一種であるウオノカイセンチュウに寄生されることにより発症し、全身に白い点が現れる病気です。
寄生された金魚は痒みのため水槽の壁や底砂などに体を擦り付けるようになります。白点が肉眼で確認できない初期段階では、健康体の金魚であれば自然治癒することもあります。
進行すると食欲減退や呼吸が荒くなるなどの症状が見られ、最終的には全身が白濁してボロボロになり死ぬ可能性があります。
感染力が非常に強いため、発症している個体を発見したらすぐに他の金魚と隔離することが重要です。
ウオノカイセンチュウは15〜25度程度の水温を好むので、28〜30度に水温をあげることがおすすめです。また薬浴も有効です。メチレンブルーやマラカイトグリーンなどの薬剤で1週間程度薬浴してください。
尾くされ病
尾くされ病は観賞魚によく見られる病気で、水槽内の水質の悪化により発生するカナムナリス菌が原因で発症します。
初期段階では体力の減退や尾びれの先端が白くなったり充血したりします。そして症状が進行すると、尾びれが白濁しながら溶けていきます。
感染力が強力なため、放置すると菌がまたたく間に全身に広がりボロボロになって死んでしまいます。そのため適切な処置を行うことが大切です。
感染を確認したら水槽のリセット、水の全入れ替えを行ってください。感染した個体を他の金魚と隔離し、グリーンFゴールドや観パラDなどの薬剤で1週間程度薬浴をします。
感染初期で適切な処置を行えば、それほど厄介な病気ではありません。
「個性」溢れる美しさ
丈夫で初心者でも飼いやすい品種であるため見かけることも多い朱文金。長い尾びれをなびかせて優雅に泳ぐ姿は美しく見惚れてしまいますよね。
一つとして同じ柄を持つ個体がいないという「個性」も魅力の一つです。
また温和な性格といわれる朱文金ですが、愛情を持って飼育をしていると段々と人慣れをしてきて、餌をおねだりするような仕草を見せてくれるなどの「人懐っこさ」も持ち合わせています。