獣医療の現場に「なくてはならない存在」を目指す|株式会社Zpeer 副社長 兼 COO・藤本裕さん

本メディアpepyの編集者。1996年生まれ、青山学院大学経済学部在学、実家で保護犬のボーダーコリーを飼育中。ドッグヘルスアドバイザー・ドッグトレーニングアドバイザー・ドッグライフアドバイザーの資格を持つ。
zpeer

今回は、「株式会社Zpeer」の副社長兼COOである藤本裕さんにインタビューしてまいりました。

Zpeerは、獣医師同士または獣医師と獣医療企業・団体とのコミュニケーションを目的とした日本最大級の獣医師専用サイト「Vetpeer」や、獣医師目線による商品レビューや飼い主さんの悩みへの回答を公開している「Vet’s Eye」といったサービスを展開している会社です。

「すべての産業動物・伴侶動物(ペット)に適切な医療を」をミッションに、獣医療企業・団体に対して市場調査やコンサルティングなどのマーケティングサポートなども行っています。

Zpeer創業にかける想いや業界発展に向けた今後の展望などについて、pepyが藤本さんにお聞きした内容をまとめました。

 

Zpeer立ち上げのきっかけ

―経歴をお聞かせいただけますか。

日本の大学院を修了した後に、米系のコンサルティングファームに入社し、アメリカでのMBA取得後、同コンサルティングファームの米国オフィスに勤務しました。

その後は日本の大塚製薬に転職、グローバル事業部ビジネスインテリジェンス担当部長として、主に欧米の事業に従事した後、退職後2013年6月にZpeerを創業しました。

 

―今まで人の医療業界に従事されていた中で、なぜ動物の医療業界で起業されたのですか。

実は前職で、人の医療品業界だけでなく動物の医療品業界のコンサルティングにも携わっていました。

どちらも経験した中で、人の医療業界に比べて獣医療業界では「最新の医療情報を瞬時に把握したり、獣医師の先生方が自由に情報交換したりできる環境」があまり整っていないという問題を強く感じたことがきっかけのひとつです。

 

―「自由な情報収集・情報交換ができる場がない」中で、どのような問題があったのでしょうか。

人も動物もそうですが、新しい薬や医療技術などの情報が医者や獣医師の先生方に瞬時に届いて、すぐに診療に使えるからこそ1頭でも(1人でも)多くの患者さんが助けられるわけですよね。

ですが全国の動物病院の約6割が獣医師の先生1人と数名の看護師で診察業務を行っているということもあり、新しい医療情報を仕入れに頻繁に勉強会に行ったり、営業で訪ねてくる医療品メーカーの方のお話を時間をかけて聞いたりすることがなかなか難しい状態です。

獣医師の先生にとっては「最新の医療情報を知りたいのに知れない」ですし、医薬品メーカーにとっては「新薬や研究のデータを満足に伝えられない」。こんな状態のままだったら、本来ならば救えるはずの患者さんも助けられなくなってしまうかもしれません。

「獣医師の先生と医療品メーカーがいつでもつなり合えるような環境があれば両者の問題を解決できるし、ひいてはより多くの患者さんを救えるようになるかもしれない」、そう思ったのがサービス立ち上げのきっかけです。

 

―Vetpeerができる前までは、獣医師の先生方同士で意見交換する機会も少なかったのでしょうか。

学会や地域の勉強会が定期的に開かれていたので、そこで他の先生方とお会いして意見交換する機会はもちろんありました。ですがやはり日々の診療が忙しいために、頻繁に病院を離れて学会や勉強会に参加するといったことは難しいという状態でした。

一方でオンライン上で会話できる場所、例えばfacebookのグループなどで情報交換できる場は一応あったのですが、匿名性が低かったり、一般の飼い主さんも閲覧できるメディアなのでオープンな意見交換がなかなかできなかったり。

自由な意見交換という意味では、まだ十分な環境は整っていなかったと感じていました。

 

わずか5年で約6割以上の獣医師の先生方が会員に。認知度アップの仕組みとは

―2013年のサービス開始から5年で約9000人、全国で6割以上の小動物臨床獣医師の先生方に会員登録されるまで成長したとおうかがいしました。そこまで成長される中で、どのようにしてVetpeerのサービスを獣医師さんに広めていったのでしょうか。

医薬品メーカーやペットフードメーカーの方に、営業の補助ツールとして当サービスを利用していただけたことが認知を拡大できた大きな要因だと考えています。

例えば医薬品メーカーが新しい薬を開発・販売すると、その薬を使ってもらうために営業の方が動物病院に訪ねていくのですが、先ほども申した通り獣医師はどうしても診療業務が忙しく、興味はあるけど満足にお話を聞くことができないということが多々ありました。

そこで医薬品メーカーと協力して、新薬の効果や使用方法などをまとめた動画を作成し、Vetpper上で公開するようにしたんです。

メーカーの営業の方が病院を回る際に、興味はあるけれど時間が取れない獣医師の先生に「Vetpeerに登録すれば空き時間に動画で見られる」とお伝えしていただいたところ好評をいただき、会員登録をしてくださる先生が増えていきました。

 

―まさに獣医師とメーカー双方のニーズを満たせたことが、認知度アップに自然とつながったのですね。他にもサービスの魅力を伝えるキーとなった部分はありますか。

獣医師専用サイトとして本人確認を徹底していることによる、「安心感」もポイントのひとつかなと思います。

登録時に氏名や勤務先はもちろん、獣医師免許番号の記入もお願いしています。さらに獣医師の先生ご本人であることを電話等で確認させていただくこともしています。

一般の方は入れないので必然と情報の純度は高くなり、獣医師の先生方に「ここだったら信頼できる情報が集まるし、安心して情報発信できる」ということを感じていただけたのがキーだったかなと考えています。

 

また有料ですが、診断や治療方針の決定に困ったときなどに質問を投稿すると、それぞれの診療科のスペシャリストが「これだったらこう診断しますよ」とオンライン上でコメントしてくれる機能もあります。

やはり獣医師の先生方それぞれに専門とそうでない分野がありますので、非専門分野の症例や診療方法をいちから調べようとすると手遅れになってしまう危険性もあります。「瞬時に獣医師同士で情報交換ができる」という点で、評価していただけたのではないかと思います。

 

―医療情報は常にアップデートされているので、事情があって一定期間現場を離れているとどうしても遅れがちになってしまいますよね。

Vetpeerなら最新の医療や薬の知識を瞬時に把握できるうえ、わかりにくいところはみんなで話し合いながら解決することができるので、全国の獣医師さんの診療レベルを底上げできるという意味でかなりステキなサービスですね。

 

獣医師の先生にとって「なくてはならない存在」を目指して

―Vetpeerを運営する中で、「世の中に貢献した」と思う瞬間ってどんなときでしょうか。

日本で初めて動物用の抗がん剤が出たときに、Vetpeerを通じて適切な形で獣医師の先生方に広められたことがひとつあります。

初めての抗がん剤なので、きちんと薬のことを理解いただいたうえで処方してもらいたいというのがメーカー側の意向であり、Vetpeer上でセミナー動画を公開して、必ず動画を見てくださいね、ということを基本方針としてくださりました。

結果的に多くの獣医師の先生方に動画を見ていただけましたし、だからこそ正しい情報や知識にもとづいて新薬を広められたことを実感できています。

また獣医師間のコミュニティのやり取りの中で「患者さんが救われたんだなぁ」と思えるようなスレッドもたくさんあって、それを見るとVetpeerを立ち上げてよかったな、と強く感じます。

 

―今後の展望をお聞かせください。

ひとつは、Vetpeer自体を「現場で働いている獣医師の先生方にとって、なくてはならない存在」にしたいと考えています。

今はまだ情報収集・情報交換サイトとしての色が強いですが、将来的には獣医師の先生が医療情報を効果的に学べるような仕組みや、診療時に「これがなくては困るな」っていうくらい便利なものにしていきたいと思っています。

例えば薬用量や疾患ごとの食事療法食を検索するときに、今はほとんどの獣医師の先生は紙媒体の資料で行っているのですが、それをオンライン上でできるようになればより瞬時に、簡単にアクセスできますよね。

また情報も常にアップデートすることができるので、いつでも最新の医療情報に基づく学習や診察が行えるようになり、業界全体の発展にもつながると思っています。

 

もうひとつは、「専門医と非専門医をつなぐサービスをより強化したい」と考えています。

目の前の患者さんで困っているときにすぐに専門医の方に相談できる仕組みが整えば、全国の動物病院の診療レベルを一定以上まで高め、そしてそれを均一化することができると思っています。

どの動物病院においてもより高品質な医療が受けられるようになれば、その結果として幸せなペットと飼い主さんが増えていく。そんな世の中を目指していきたいです。

 

獣医療の発展に向け、私たち飼い主ができること

―獣医療の発展、そしてペットとの幸せな社会のために、私たち飼い主側として協力できることはありますか。

ペットの異変にいち早く気づくことができるのはやはり飼い主さんなので、ペットの健康や体調について常に気を配ってあげてほしいです。

そしてなにか困ったことがあれば、自己流で解決するのではなく、きちんと主治医の先生に相談してほしいと思います。

より多くの飼い主さんとそのペットが動物病院にきてもらえるようになれば、獣医療業界はどんどん発展していきます。

 

また、周りの情報に惑わされず、その子の状況を直接診ている主治医の先生の言うことを守ることが大切だと考えます。

昨年、Vetpeer会員の獣医師の先生方約1200名が飼い主さん向けに情報発信を行っている「Vet’s Eye」というサービスを開始しました。

ペットフードの評価やペットを飼う上での悩みに対して、獣医師の先生100名が回答した結果をまとめています。1000名を超える獣医師が携わっている信頼度の高い情報サイトですので、こちらもぜひご利用いただけたらなと思います。

 

今後、Vet’s Eyeをはじめ、飼い主の皆さんに対して直接貢献できるようなサービスを広げていきたいと考えています。

飼い主の皆さん、獣医師の先生方に対して、それぞれ正しく、役に立つサービスを提供していくことで、ペットと飼い主の幸せに貢献していきたいと思います。

 

Vet’s Eyeについて

コンテンツコンテンツ概要
製品評価フード、飼育器具等を獣医師が製品の詳細なレポートを閲覧、または実際に試用し公平に評価。「獣医師の〇〇%が推奨」という形で公開している。
100オピニオン飼い主が普段悩んでいることや疑問に感じていることに対して、獣医師100名が回答し、それぞれの見解を公開している

 

会社・事業概要

会社名株式会社Zpeer -ズピア
代表取締役野川 真義
事業内容・獣医師コミュニティサイト「Vetpeer
・飼い主向け情報ポータル「Vet’s Eye
・獣医療企業・団体に対する製品開発、マーケティング、販売支援サービスの提供
・獣医療企業・団体に対する、開発・上市・マーケティングの総合コンサルティングサービスの提供
HPhttp://zpeer.info/